kagamihogeの日記

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超高齢者医療の現場から - 「終の住処」診療記

人が老いた時に何が起きるのか、というのはソレナリの年齢になれば自然と気になるというものです。本書は特別養護老人ホームの医師による「老いと死」に関することを記述された本である。当たり前だが内容的に結構重い本で、まず実体験を基にしたエピソードがいくつか紹介されるのだが、これがまた中々におぞましく、医療システムと金銭トラブルと血縁関係がドロドロに交じり合った地獄絵図である。はっきりいって「こんな最後は迎えたくない」代物である。

ただ、これは、人が現状の技術では老いることから逃れられない以上、等しく降りかかる可能性がある。そういうわけで、これはもう反面教師と、文字通り先人の知恵として学ぶ以外に無いように思う。人が老いたとき一般的にはどういう身体・精神状態になるのか。どのような病気になりやすく、それらへの対処はどのようにすべきか。認知症に対する知識もまた同じ。これらは先達の積み上げである程度は状況別のパターン化されているようなので、家族・医療機関との連携もともかく、本人の知識量も重要なポイントのようだ。

本書では比較的穏やかに終末を送ることのできた事例も挙げられているのだが、ではどうしたらそのような最後を迎えることができるのか。これについては「健康老人十二か条」(でぐぐれば出てくる)が一つの指針となるようだ。筆者の言を引用すると、下記のようになる。他にも幾つかの指針やアドバイスが書かれているが、だいたい下記の記述に集約されているように感じる。

この十二カ条の要点は、第一に健康習慣(規則的な生活リズム、バランスのとれた食生活、禁煙)を維持し、第二に身体および頭を使う活動を続けること、第三は自立した行動に心がけるとともに社会との接点を持続する行動が重要ということです。

超高齢者医療の現場から - 「終の住処」診療記 (中公新書) 終章 超高齢期を前向きに生きて呆けの進行を遅らせよう - 八十歳を超えても元気に活動できる秘訣

最も、これを持続させることこそが困難であり、わかっちゃいるがやめられないものでもあるのだが……

俺は本書を読むまで「幸福な最後」というのは、資産の多寡が決定付けるものだとばかり思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。高額な老人ホームで食事や排泄や清掃などあらゆる活動を手取り足取りやってもうらことは、人から思考と運動を取り去り却って老化を加速させかねない、というのである。結局、最後に頼りにすべきは自分自身に他ならないということなのだろうか。

本書は、他にも医師としての日本の医療システムへの提言、尊厳死安楽死に対する見解と議論などやや高度な内容も含まれる。その辺は俺は当事者でないんで正直あんまし深く読まなかった部分だけれど。

そういうわけで、人が老いたときに何が起きるのか、を通り一遍知るには良い一冊でした。

超高齢者医療の現場から - 「終の住処」診療記 (中公新書)

超高齢者医療の現場から - 「終の住処」診療記 (中公新書)