俺は先の大戦に関する書物は趣味でいくらか読んでおり、太平洋戦争については架空戦記の系統の小説を通してではあるが、ある程度は知っているつもりだった。がしかし、書店で本書をぱらぱらーと見たところ、太平洋戦争のはじめからおわりまでが書かれた本を読んでいないことに気付かされた。要は、太平洋戦争全体に関しては何も知らないも同然だったのである。
本書は、太平洋戦争がどのように始まりどのように終わったか、の事実が淡々と書き連ねられている。戦争前夜の日米、そして皆さんおなじみの真珠湾空襲、ミッドウェー海戦とガタルカナル島の戦闘で上巻を折り返し。下巻は、ニューギニア・アッツ・タラワに始まり、インパール作戦、サイパン失陥、フィリピン沖決戦、そして終戦へ……が大きな流れ。
本書の特徴は、太平洋戦争を読みやすい形で提供している点にある。前段落で書いた内容のことぐらいは教科書で習ってるやろ、と思う人もいると思う。がしかし、本書は教科書的な無味乾燥な記述は避けている。何年何月にナニナニが起きました、という西暦と出来事を列挙するやり方は事実の知識という点では正しいかもしれないが、お世辞にも読みやすいとは言えない。俺自身、そーゆー歴史のお勉強の仕方はキライである。やはり、歴史の流れっていうかダイナミズムっていうか、何がしかたのしく読める要素が無いとツマランし長続きしないものである。
そこで本書はどのような工夫をしているか。語弊は承知の上だが、ぶっちゃけ歴史モノの小説チックにしたてている。史実が題材なのに小説とはこれいかに、という意見は御尤も。でも、ノリはまんま小説なんですよね。まぁ小説みたいに感じるかどうかは人それぞれ。とはいえ、歴史的な事実を淡々と書いていくだけでなく、小エピソードや発言を挟むなどして読者のアテンションを失わないようコントロールしているのは確か。下巻に入ると追い込まれてゆく将兵たちの間で歌われたという歌詞がしばしば掲載されるのだが、これがまた泣けてくる。
というわけで。実は太平洋戦争って良く知らないのよね、という方にオススメな二冊です。
- 作者: 児島襄
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