kagamihogeの日記

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戦後世界経済史―自由と平等の視点から

本書は、タイトル通り第二次世界大戦後に世界全体と各国がどのような経済史を辿っていったのかを概観する一冊である。もちろん、世界全体を微細に渡り精密かつ正確な描写をすることは一個人の限界を越えていることは、筆者も認めている。あくまでも概観を得るためを目的に執筆した、とのことである。そうはいっても、戦後に限定したとはいえ全世界を網羅するとなるとその作業の膨大さは素人目にも気が遠くなる。新書サイズとはいえ 400 ページになる太めの一冊だが、その分の読み応えはある。逆に言えばよくもまぁ 400 ページに収めたところに、著者の高いまとめスキルが伺える。

内容に関しては、俺は別に経済の専門家でもなんでもないので、正しいとか正しくないとかは良く分からない。この日記を書いている 2011/08/10 は、アメリカ国債の格下げを受けてドルが 77 円を割ったり日経平均が 9100 円下回ったりと、マーケットはムチャクチャな状態になっている。こういう情勢下で、投資家でも何でもない俺が経済史の本を読んだところで何の得があるのか分からないが……まぁ、俺にとって読書は趣味の一環のようなものなので気にしない気にしない。

といったところに書籍感想を留めるのもなんか味気ないので、理解できたとこの感想だけでもダラダラと書いていきたい。

まず、社会主義つーか共産主義つーか、計画経済がなんで上手くいかなかったのかが本書で結構な紙幅を割いて解説されている。俺は小学生か中学生くらいの頃に学校の歴史か公民で共産主義の授業があったときにコレってうまくいくんじゃね? と思ってたクチなんですが、現実はそうはならなかったわけです。その理由をまさに歴史の観点から本書は解説してくれました。その答えを一言で言えば、インセンティブという概念が欠如してた、になります。お偉いさんの言うこと以上のことをやったら誉められるどころか叱られるため、個々人単位では最小限度の結果に向って最大限の努力をするのが正解になる。そうすると、個人単位では最善を尽くしているハズが経済全体と見ると凄まじい硬直性を発揮するようになる、と。言われてみれば、ソッスネ、って話なんですが、やってみるまでわかんなかったわけですよね。そんなの絶対おかしいよ、って言う人も居るには居たんだろうけど、実際にこういう結果が起きたということは、上手くいくと信じてた人がタクサンいたってことなんだろうし。

ところで本書の副題は「自由と平等の視点から」になっている。経済とか良くわかんない俺からすると、経済と「自由と平等」なんていう道徳の教科書に出てきそうな単語がどう結びつくのかよくわからなかった。が、最近の経済を理解する上では、まさに道徳という表現が正しいのかはともかく、人間はどういう生き物なのか、というところまで踏み込まないといけない段階まで来ていることは理解できた。経済という学問分野は、経済という分野だけではなく他の幅広い分野も含めて議論しなければいけないものらしい。それをいったらコンピュータサイエンスもそうなんだけど、ある学問分野が一定の閾値を越えると学際的な色彩を帯び始め、オマケで人間ってなんなんですかねぇ みたいな風になるのは何故なんでしょうねぇ。

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)