kagamihogeの日記

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よくわかる流通業界

よくわかる流通業界 (最新 業界の常識)最新〈業界の常識〉よくわかる物流業界 (最新 業界の常識)って別の業界なのかーとかそんくらい残念な理解のもとに買ってきた本。まず、これら二つの業界を分けるのは扱うモノの種類に拠る。モノというか、その業界のビジネスの流れの違いといってもよい。前者は商売の流れであり、後者は実物の流れを扱う。物流というのは、文字通りトラックやら鉄道やらで実体のある商品を運ぶことなんですな。対して商流というのは、受発注やら販売やら仕入れやらの商売の流れであり、これは突き詰めれば情報の流れなので、必ずしも実際のブツの流れと一致するわけではない。よって、両者は別の業界ということになる。

とまぁそいう定義だけだと分かりにくいんで具体的な業種を挙げたほうが良い。たとえば、コンビニ、スーパー、ドラッグストア、ホームセンター、百貨店、家電量販店、百均、アウトレットモール、EC、カタログ通販などなど。流通業界というより小売業といった方が通りは良い気がする。ぶっちゃけ何らかのモノ売ってればそれは全部小売であり、モノを販売するためにはメーカーなり卸なりから仕入れたりが発生するので、それが流通業界ですよ、ということのようだ。

そういうわけで、小売を分類・整理して理解のはかなり難しい。業種や業態も多種多様、販売してる商品も千差万別、ハコの大きさも同様で、売上や利益率もまた同じ。販売業態から推測できる範囲においてはパクり性(コンビニとか)が容易であり、新陳代謝が激しいのも特徴。また、日本が直面してる少子高齢化社会・消費の成熟化という大問題があり、勢力地図がしょっちゅう書き換わる。その上、参入プレーヤーが従来の小売業だけでなく外資や商社や金融からのマネー流入と異なる思惑の方々が入り乱れての混戦であり、全体像を捉えるのは中々にハード。一つの尺度だけで捉えようとするのはムリってことなんでしょうなぁ。

ところで、メーカー・卸・小売の関係が俺はちんぷんかんぷんだったんだが、本書はそこも解説してある。今でこそ、実際のモノを製造するメーカーとそれを販売する小売の距離は近い方がいいに決まってんじゃん、と言えるが、これは日本の歴史的背景が絡んでいる。戦後の復興では兎に角モノをジャンジャン製造せざるを得ず、結果としてメーカーの力が強くなる。で、次に複数メーカーからの取り纏めとして卸が発達する。その後で、小売店舗が卸から仕入れて物を販売する、といった発展のステップを辿った。ポイントは、製造・配送・販売の経路が日本では「たまたま」メーカー・卸・小売という力関係に結果として落ち着いたのであって、こうでなければならない理由はどこにもない点にある。

歴史的に止むを得なかったとはいえ、製造業主体の流通経路が大いなる無駄になっているのは素人目にも明らかなこと。加えて、日本市場は成熟化した上やたらに消費者の目線は厳しく個々のニーズもバラバラ。ただ、これは小売業にはプラスに働いており、製造業主体から消費者の需要主体でビジネスを組み立てられるチャンスになったのが近年の流れのようだ。ただまぁ、新旧交代の常として熾烈な競争と淘汰の渦が吹き荒れる訳で、小売業の前線には死屍累々というのもまた事実なんでしょう。勿論、消費者としては様々な商品やサービスの恩恵を受けられるわけで、歓迎すべき事態でもあるんでしょうが……

そういうわけで日本の小売業ってこういう状態なのかーと理解を深めるには良い一冊でした。

よくわかる流通業界 (最新 業界の常識)

よくわかる流通業界 (最新 業界の常識)