kagamihogeの日記

kagamihogeの日記です。

東京 いい街、いい家に住もう

本書の分類は、東京圏でのいい家・住みやすい家選びの本。ただし「駅から○分がよい」とか「間取りはこれこれがいい」のようなハウツー集ではない。どういう本かというと、各種の客観的な事実や統計データから、いい街やいい家とはこういうものである、と導き出している。本書のスタイルは、様々な文献からグラフや図表を参照し、それらがどういう意味を持つかを読み解くスタイルになっている。……と書くとなんかイカメシイイメージがあるかもしれないけれど、読みやすいように工夫された文体になっているのであまり心配はない。さすがマッキンゼー出た人が書いた本だなぁ、という印象を持つ一冊。

じゃあ本書ではどんな分析をしているのかというと。七章それぞれの内容を大雑把に要約してみる。

まず第一章では、住もうとする街が住民基本台帳を使用してどのような人口分布にあるかを知り、自分の身の丈にあっているかどうかを確認することから始まる。

第二章では、カタログスペックだけでは判断できない情報の分析。公園や街路の整備が適度かもしくは適度にする計画のある区かどうか、商店街に対する対策が打たれているか。この章では大病院が近くにあるのは好条件か? という節もあり、住居選びには健康・生きがい・収入も加味するのが必要なことが書かれている。

第三章では子育てに関してふれている。近年は子供が犠牲になる事件が大々的に報道されているものの不審者による被害と近親虐待数はとんとんであり、実際には子供を取り巻く治安は良くなっているデータを示している。また、子どもが遊びやすい・勉強に取り組みやすい環境とは何なのか・どのようなものか、についても触れている。日本の各市町村や海外の取り組みの事例が面白い。

第四章では高層街に住むリスクについて述べている。高層居住者には死産・流産率が高いなど健康被害が見られる点や、地震・火災に弱い点、ヒートアイランド現象による局地豪雨が起こること、一帯の沿線が混雑することなどを取り上げている。どうも高層ビルは極一部の地主や権利者にしか恩恵が受けられない仕組みのようだ。

第五章では、なぜ木造建築が主流になっているかの理由や、木造建築を立て替えるならこうすべき、などの提言が書かれている。

第六章がおそらく本書がいちばん言いたいとこだと思うのだが、低層街の魅力について書かれている。なぜ低層街が良いかは、人の視覚による情報処理の仕組みにより解説している。そのため、斜線制限ではなく絶対高さ規制を設けている自治体が良い、と書かれている。また、高層建築は様々なリソースが一極集中してしまうので、低層建築による面発展のほうが成長余地が高いという指摘も面白い。そして、具体的な住まいの内実に関しては、安眠・静穏・一人の空間を持てる空間設計・日当たり・通風設計などについて書かれている。設備配管やエレベーター、家と街との接続点に関しても書かれている。

第七章ではちょっと打って変わり、街や暮らしに関して税金のあり方についての議論がなされている。この辺りの話は俺にはちょっとピンと来なかった点なのでもうちょっと勉強しないとなぁ、と思った。固定資産税の正常化による効果、法人税の国際比較、年金対策などまで書かれている。

数値データから見えてくるものってこんなにあるんだなぁ、と思う一冊でした。とにかく大量の数字が出てくるんで一見すると敬遠しがちな本だけど、文章そのものは非常に読みやすく書かれています。東京付近に住んでる人なら一読の価値はあるんじゃないかと思います。

東京 いい街、いい家に住もう

東京 いい街、いい家に住もう