404 Blog Not Found でおなじみの子飼 弾氏が新書について語る新書。個人のものとはとても思えない蔵書量に裏打ちされた著者の新書に対する愛が滲み出ている一冊。
内容は、まずなぜ新書を読むのが重要なのか、から始まる。それに続けて、どのように新書を読みこなしていけばいいのかの方法論がある。俺は著者の blog で新書を読むたのしさを知ったクチなので当然なのだろうけど、本書で書かれているハウツーは俺自身もやっている方法が数多くあり、かなり実用的に感じた。
本書の後半は「新書レーベルめった斬り!」と題し、著者の蔵書から各レーベルごとの代表作をピックアップして紹介している。自然科学、現代社会、情報・ビジネス、経済、歴史・地理、哲学・思想・生き方、文化・ことば。氏の blog ではほぼ毎日何がしかの書評がアップされているが、本書のこの部分は CD アルバムでいうところのベスト版な趣がある。新書に焦点を絞った書評のベスト版とでもいうべきか。新書読んでみようか、と感じた人はここから選ぶのがよさそうだ。
ただし、Part3 ではこんな前書きがある。
ただし Part2 でも述べたとおり、本を読むことにまだ慣れていないのなら、人のお勧め本を読む前に 300 冊程度は読書経験を積むべきです。私のセレクションにはどうしても私の価値観が反映されており、最初からそれに染まる必要はないということを事前に記しておきます。
新書がベスト (ベスト新書) Part3 新書レーベルめった斬り! p.100 より抜粋
俺は最初、これに疑問符が付いてしまった。あんまり新書に慣れてないなら、とりあえず著者がオススメしてる本は買っとけ、なスタンスでいいんじゃないの、と思ったもので。しかしこれは Part3 のレーベル別紹介を読みすすめていって納得いった。当然のことだけど、著者のセレクションにはかなり偏りがある。この偏りに馴染めるかどうかは未確定だし、他人のセンスに依存しすぎるのも考え物、と本書で述べている。なので、Part1 で書かれてるように、新書初心者はとりあえず気になった本を大人買い、が正しい選択肢なのだろう。
ここから本書の感想とはちょっと離れた事を書くのだけど。著者の蔵書写真を見ると、あれはもう将来図書館かそれに近い存在になるんじゃなかろうか、と思えてならない。図書館のように市井に広く公開される存在にはならないまでも、誰かの視線に基づいて選ばれた書籍群、というのは書籍選びにおいて一定の価値があると思うんですよね。奇しくも著者は新書の読み方の章で読んだっていう事実だけでも記録してネットに上げておく価値はある、と述べている。どこかの誰かの書籍選びセンスがどこかの誰かにとって有益な可能性ってそこそこあると思うんですよね。
- 作者: 小飼弾
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2010/06/09
- メディア: 新書
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おまけその1。著者のスゲー立派な本棚の前には霞みまくりなウチの本棚。本書で幅 75 × 高さ 180 センチの本棚をまず買うことを推奨しているけれど、コレはほぼ同型のものです。使用例の一つと思って頂ければ幸いです。そろそろキャパが厳しくなって延命策に「平積み」してるとこは笑い所です。ちなみに新書の数は 50 冊でした。本書のアドバイスは「まずは 100 冊」なのでまだまだですね。
おまけその2。多くの読書法の例に漏れず、本書も積ん読を推奨しています。実際どんなもんかというと、ウチはこんな感じにドカッと置いてあります。外出する前に「どれにしようかな」でホイッとカバンに放り込みやすいよう、デデンと置いてあるわけです。……でもホイッと持ち歩けるサイズの本が写ってないのは失敗だったか。そういうサイズの積ん読がいま在庫切れなのですよね。