kagamihogeの日記

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Twitter の 140 字でまとめるってのは作文技術の向上に役立つのでは

俺は帰省すると、母によく「○○って何?」と聞かれる。○○に入るのはコンピュータ関連の用語で、直近の例だと「OS」「はてなスター」について尋ねられた。こういう種の質問や疑問をされた人間はお分かりの通り、コレに答えるのは結構しんどい行為である。

なぜしんどいかと言うと、必ずしも正確な定義を求めているわけではないことに起因する。母は会話と好奇心の延長線上で尋ねてきているので、辞書的な正しい解答を欲しているわけではない。かといって間違った知識を植えつけるのも人としてマズい。そして、あんまり長いこと喋ると右から左になってしまうし、短すぎると今度は逆に何も伝わらない。つまるところ、あくまでも単なる会話なので、正確に述べようとする余り長すぎることもなく、要点を失ってしまうほど短すぎることもないレスポンスを用意する必要がある。更に、数秒以内にやらんと会話が成立しなくなるのでスピードさも要求されるし、相手の知識量を推し量りながら言葉をチョイスしないといけない。まぁそこそこタイヘンですよね、コレ。

ただし、この「冗長になりすぎず要点を失うほど短すぎることなく相手のバックグラウンド情報も押さえつつ文脈という空気を読んで伝えたいことを話す」という訓練は新人さんの教育で役に立ったりもしている。キツイっちゃキツイけど、脳みそコネコネして言語をヒネり出すのはソレナリにたのしくもあります。

とまぁここまで書いておいて思いだしたのは、197x のセッションでとあるプレゼンターが「日本語による文章作成能力の向上には、Twitter は最適である」と話していたこと。140 字という制約下で言いたいことをまとめる作業ってのは、情報の伝達能力ひいては文章作成能力の向上に寄与すると思う。長すぎず、短すぎず、それでいて意味を失わない 140 字を作る程度の能力。まーこの意見そのものは今まで色んな人たちが言ってるんでイマサラ感バリバリだけど。

なので、Twitter で「○○って何?」というお題に対して 140 字で解答する、ってのは結構日本語能力鍛えられるんじゃなかろうか? とりあえず俺は 140 字で「OS」「はてなスター」について答えるのはしんどいです。

などと書いていて更に思い出したのは 理科系の作文技術 (中公新書 (624)) である。

米国で、小学校段階(日本の制度なら中学 2 年までに当たる)で使っている言語技術教育(Patterns of Language)というのがある。その小学 5 年生用の巻に、レポートの書き方の話が出てくる。サンディーという女の子が、宿題で「紙の歴史」という題で 250 語のレポートを書かされることになる。250 語で紙の歴史一般を書くのはとても無理だと気付いて、彼女はパピルスに主題をかぎる。そして、図書館で材料を集め、また古代エジプト史専攻の大学教授にインタヴューして、

パピルスは、古代エジプトで、少なくとも 5000 年前に発明された。つくるのはむずかしかった。まずナイル河の岸で葦をとってきて……

とはじまるレポートを書くのである。

(中略)

250 語のレポートと書いたが、英文の長さを日本文の長さに換算することはむずかしい。(中略)しかし、ごく大ざっぱな見当としては、英文 m 語が日本文 2.5m 字と思ってよかろう。

理科系の作文技術 (中公新書 (624)) p.20-21 2.3.3 長さの制限 より抜粋

サンディーちゃんの恐るべき行動力にビビる一節だが、それはさておき、140 字でなんか書くというのは文章能力を高めるのに有効なことの裏付けを本書はしているように思う。ホントはこの節は別のことの解説なんだけど、まぁいいや。そんなわけでですね、日本語書くの苦手じゃーという人はテキトーなお題で 140 字でまとめるテストなどから始めてみてはいかがでしょうかね。

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))