kagamihogeの日記

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生態系ってなに?―生きものたちの意外な連鎖

系、すなわちシステムとは、システム内に存在する各要素の振る舞いの集合によって定義づけられる、とかなんとか説明されることが多い。なので、生態系といった場合、その「系」の「中の人たち」たる要素はなんらかのイキモノたちとなる。本書は、タイトルどおり「生態系って何ぞ?」という疑問に対してわかりやすく、かつコンパクトに解説を行っている。数式もちょっと出てくるけど、基本的には数学・生物などの知識はほとんど要らないと思う。

生態系、と聞いたときに思い浮かぶものは何だろうか。例えば、河、湖、海。人が生態系について考える場合、一定の範囲で区切る(そうしないと研究に取っ掛かることすら出来ないという事情もあるが)。ただ、それら人が区分した生態系はすべて相互に作用しながら、地球というひとつの生態系を形作っている。

そして、その相互作用はミクロでもマクロでも、どのレベルでみても行われている。その例として、本書では、種間競争や窒素の流通などを取り上げてわかりやすく説明を試みている。この事実をもってして、筆者は、単独で生きていける生物など地球上のどこにも存在しないのだ、と本書で繰り返している。

その事例の中で俺が印象深いと思ったのは、ヒトデをある海域から排除する実験。実験結果は是非本書で確認してほしいが、ヒトデというひとつの種を排除するだけでといともカンタンにその場の生態系は異なる振る舞いを見せだす。生態系というのは、非常に複雑でダイナミックな振る舞いを持つものなんだな、と俺は深い感銘を受けた。

生態系というのは、表面的に起こっている事象だけを見て判断するのは早計ということである。筆者は、安易な外来種の導入やペットの不法投棄によって起こる生態系の変化についても言及をしている。

筆者の結びの言葉に本書のすべてが凝縮されている。

私たちが自分たちと未来の世代のためになすべきことは、生態系の物質とエネルギーの流れを適切に保つこと、これが損なわれている場合には健全なものに復元することであり、そのためには歴史に裏打ちされた地域の生物群集を保全し、身を慎んで生態系をマネジメントする姿勢を常にもっていることが必要だということになります。目先の利便のためにつながりを断ち切ることは、天に唾することになりかねないのです。

生態系ってなに?―生きものたちの意外な連鎖 (中公新書) 第 5 章 生態系は共生系 生態系概念のまとめ より抜粋

生態系とは何なのか、それを踏まえた上で「環境」とか「エコ」とか言われるものをどう考えて接したらいいのか。その大きなヒントとなる一冊になったと思う。

生態系ってなに?―生きものたちの意外な連鎖 (中公新書)

生態系ってなに?―生きものたちの意外な連鎖 (中公新書)