不思議な効果を及ぼす「アンティーク」を巡る人間模様の描写が魅力的なラノベのシリーズ第 4 幕。本書の構成は、毎度おなじみの 1 章ずつで基本的には完結するようになっていいる―最も、シリーズを重ねているのである程度は繋がりがあったりはするけど。今回は人の心がメインテーマだったようで、切なく身につまされる内容の多い仕上がりになっている。
今回扱ってる各章の概要はこんな感じ。人の存在感を希薄/浮き彫りにさせる『影』と『光』、他者の「答え」を知ることのできる『心声』、恋の運命を捻じ曲げられる可能性を持つ『赤糸』 最後の章は……主人公 2 人のすれ違いっぷりにニヤニヤする御約束の章なのが、なんつーかとてもラノベらしいと思うw
それにしても、人生はホント良く出来た下らない SLG だと思う。他人のパラメータもインタフェースも非公開。ただし、対話やウワサ話などによってある程度推測出来るが、そもそもそれが正しい保障などどこにもない。更にこのゲームの性質が悪いのは、自分自身のことすら自分自身で解析することも難しい。一旦「正解」だと思ったことも明日には仕様変更している可能性すらある。
これは……とても興味深いが同時にキツい SLG だと思う。
本書はラノベというカタチでその人生 SLG にチート要素を加えたような、ある種思考実験の意味合いも含まれているのでは、と俺は思う。そして過ぎたる力を手に入れた人たちの結末は……興味が向いたら本書で確認してほしい。ただ、まぁ……リアルチートは必ずしもハッピーエンドにはならないのだろうな、と俺は感じた。そう考えると、人の身に余る能力というのは憧れるだけに留めるのが結局は最良なのかもしれない。
そんなような、人の心とは何ぞや? を考えさせられた一冊になったと思う。
- 作者: 御堂彰彦,タケシマサトシ
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2008/07/10
- メディア: 文庫
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