池上彰さんが例のノリで金とは何なのかについての基礎知識を教えてくれる本。語りかける口調なので文章の解説としてはちょっと冗長ではあるのだが、その分なるほどと思わせる仕組みが秀逸。テクニカルに凝った方向に走ったりせず、儲けるには兎に角こうしろみたいなハウツーでもなく、金とは何かの基礎部分の解説にひたすら徹しているのが本書の肝でしょう。また、なるたけ身近な例を上げて、色々なところで出てくる金に関する話題やニュースはどこか遠い世界の出来事なんかではなく、それらは我々自身の生活とどこかで繋がっているのですよ、という語りかけの仕方も、読みやすさの一助になっているのだと思う。
この本の最初では、紙幣というただの紙切れになぜ価値が生じるのか、について歴史を踏まえて解説がされる。簡単に言えば、この紙切れに価値があると一人一人が信じることで、経済全体としては都合が良くなる。経済全体が上手く良い方向に回れば、個々の暮らしにもそれが反映される、という理屈。言われてみればナルホドと言った感じだが、確かに歴史に沿って解説されることで理解が深まった感じです。
その後の章は割とおまけというか。一章の金に関する基礎知識を下地にして展開されていくので、興味のある人は読めばいいし、より詳しい資料に当たれば良いというか。信用を元にして金の行き先はどんどん広がっていく、ということが理解出来れば、他の章に書いてあることも自ずと導かれるので。逆に言うと、一章の内容が理解出来ないとその後の章読んでもあまり意味が無いということであるが……
本書の冒頭にも書いてある通り、この本読んだからといって財産が増えるような本ではない。経済を理解するための、あくまでも取っ掛かりとなる本である。とはいえ、基本的知識を今風に即して解説している、というところにこの本の価値があると思う。
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/10/13
- メディア: 新書
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