kagamihogeの日記

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コーポラティブハウス―21世紀型の住まいづくり

最近、コーポラティブハウスという概念を聞く機会があったので読んでみた一冊。俺にとっては聞きなれない言葉だったのだけど、日本での実績は 1960 年代から開始されている。イギリスでは 200 年以上の歴史があるとのことで、手法そのものの歴史は深いものの、日本での取り組みはまだまだのようだ。

コーポラティブハウスとは、建築家とそこに住む人間が協同で家を作り上げる手法のことを指している。定義は中々難しいのだけど、本書の冒頭ではこのように書かれているので、大雑把には下記のような理解でよいようだ。

コーポラティブハウスの定義は)"家の欲しい人たちが集まり、協同して、つくる住宅"で十分ではないだろうか。

コーポラティブハウス―21世紀型の住まいづくり p.5 はじめに より抜粋

本書では、コーポラティブハウスの特色、歴史、その作り方(土地選定、事業計画や契約・設計相談、資金計画・各種手続きや施工など)実際に日本で建造されたコーポラティブハウスの紹介、そしてコーポラティブハウスの魅力やその秘めた可能性、を語っている。

俺がまず惹かれたのは、建築のプロセスにそこに住む人が参加する、という点にある。パターン、Wiki、XP - 時を超えた創造の原則 - kagamihogeのblog を読んだばかりだからというのもあるが、コーポラティブハウスはアレグザンダーが目指した利用者の参加の原則を実践している好例ではないだろうか。ベンダーが提供する建売住宅をそのまま買うのではなく、自分たちが積極的に介在することでより満足度の高い住居を手に入れられる。もちろん、これをやるにはそれなりの知識を蓄えることと専門家や他の入居者との綿密なコミュニケーションが必須となる。ただし、それを乗り越えることで得られるコミュニティは何者にも換えがたいものだろう。

本書でも語られているが、このコミュニティの価値は計り知れないものがある。都市では失われて久しい地域コミュニティの現代版がコーポラティブハウスではないだろうか。キーワードは参加にある。家を作るところから始まるそれは物凄く密なものになるし、実例の幾らかもそのようになっている。

そして、コミュニティは成熟するにつれ形を次第に変化させていく。たいていは、より緩やかに、無理のないものになっていく。人は成長するものだから当然ですよね。こうした、地域に新しくて古い文化を築き上げられるという点で、コーポラティブハウスは非常に興味深い取り組みだろう。IT 系のコミュニティも似たような感があるよね。

土地の有効活用という点も興味深い。日本はあまりにも土地が細分化されすぎて全体的な視点では最適化利用されているとは言いがたい背景事情がある。俺の実家がそうなんだが、細くウネッタ土地とかホントどうしようもないんですよね。コーポラティブハウスは、そうした細分化された土地を一旦集約化して、その上に戸建なり集合住宅なりを効率的に建築できる。

新しく家を買うなり住みたいと考えている人には是非読んで欲しい一冊です。

コーポラティブハウス―21世紀型の住まいづくり

コーポラティブハウス―21世紀型の住まいづくり