ひょんな事から大金を手に入れる渋谷のストリートギャングのグループ。その金の出所は、裏金を専門に狙う強盗グループが、ヤクザが運営する違法賭博場から強奪したものだった。ストリートギャング、強盗団、ヤクザと三つ巴の攻防戦が勃発する。ストリートギャングのリーダーは、已む無く巻き込まれてしまった戦いに何とか生き残るために奔走を開始する。組織力にはヤクザに劣り、小回りの聞く情報収集能力にたける強盗グループに対し、大金という爆弾を抱え込まされ追い回される一方のギャングたちは徐々に追い詰められていく。窮地に陥ったギャングの頭が取った道とは……
とまぁ、後半戦まではヤクザと強盗団にじわりじわりと詰められるのを何とかかわそうと必死に抗うストリートギャングたちが描かれます。最後がどうなるかはまぁ……言わずもがなってところでしょうか。
見所は、ギャングの頭こと主人公・アキの兎に角マッチョな所作でしょうか。喧嘩をすれば相手は無く、容姿は言わずもがなの圧倒的存在感、それでいて法律スレスレのところでビジネスを行うだけの知力があり、理と情の両輪でもってギャンググループという組織を統括してみせ、ここぞと言う時には凄まじい胆力を見せ付ける。お前のような 10 代がいるか! と突っ込みたくなるんだけども、何と言うか、ここまで突き抜けられると物語に引き込まれちゃうのがこの小説の楽しみ方としては正解なんだろうなー。
しかしながらこの主人公、欲のような欲をほとんど見せない。三者入り乱れての生死を賭けることになるだろう駆け引きにも、ただ単に巻き込まれたから、生きるのに必要だから、といった程度の執着心しか見せない。その点、ヤクザ側は非常に分かりやすい論理で挑んで来るため、余計にその点が浮き彫りになっている気がする。主人公はその辺りの、ある種空虚めいた思いは自覚していて、ラストではああいう形に収まるのもまぁ無理からぬことなんでしょうかねぇ。ああいうのに対して、男の強さを感じるし憧れもするんだけど……今一つの危うさもまた感じてしまうのは何故なんだろうなぁ。
- 作者: 垣根涼介
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/06
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