西洋の名画についてどのような部分に注目すればいいのかについて述べている本。解説というよりは、著者が選んだ典型的名画十五点の見所について存分に語った本といったほうがいいと思う。芸術にはチャランポランな俺にも、なるほど西洋絵画というのはこういうところに着目すると面白く見れるのね、と感じることができた。
本書は名画のどんなところに触れているか、について。まず、名画に描かれている対象は何なのか、描かれている各要素はどんな意味を持つのか、という絵画そのものについての解説がまずある。そして、その絵画がどのような技巧表現によって制作されているか、また、どのような点から画家の卓越した技術が読み取れるかについてが記されている。
絵そのもについてだけでなく、その絵画が持つ意味*1や、その絵画と画家にまつわるエピソードも豊富にある。そして、各絵画の解説は歴史的背景についての記述で結ばれる。
本書に出てくる画家たちのエピソードを読むと、画家とは本当に熱い人種なんだと思わされる。彼らは誰も彼もが、自身の内から沸きあがってきた「描きたい」という衝動に真正面から熱心に向き合っている。その対象は、裸婦や宗教画や社会風刺だったりと多彩だけど、魂の部分は皆同じに見える。そして、何を描きたいかを追求するだけでなく、表現するための技法を研磨し続けるところもすごい。この辺りの心性はハッカーというかギークというか、彼らのあり方にすごく似てるんじゃないだろうか。
本書は 1969 年が第 1 刷で 2007 年に 60 刷を迎えていることに驚いた。俺は読んでいる最中に、論調が古臭いというか、お堅いなぁ、と感じたのだが、さもありなん。けど、これは今読んでも充分面白いと思う。この本に出てくるのは典型的名画らしいけど、ほとんど知らなかった俺でもかなり楽しめたぐらいだから。この本書いた人ぐらい語れる人と美術館行ったら楽しそうだなぁ……と感じた一冊でした。
- 作者: 高階秀爾
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1969/10/20
- メディア: 新書
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*1:時代が時代だけにキリスト教に関連付けた解説が多い