kagamihogeの日記

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アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々

本書を読み終えての最初の感想は、これはひどい、または、詰んでる、というものだった。当事者の方々には申し訳ない表現ではあるんだが、絶望的とも呼べる描写がごく一部を除いて延々と綴られている。俺はアフリカに関する知識はこの本で学ぶのが初めてなので、この本に書いてあることが全てではないとは思うのだが、それにしたって壮絶なことばかりが書いてある。

俺のアフリカに対する安直なイメージは、欧米列強に好き勝手されて搾取されまくりな地域、てなもんである。しかし、この点はかなり間違っている。政治的には独立国ばかりであり、一方的な白人支配の時代はすでに終わっている。では独立を勝ち取った現地住民は豊かになったかといえば、全く変わらずむしろ退行してしまった国家の方が多いという。その最たる原因は、指導者層の「公の欠如」であると本書は説く。

公の欠如とは、一言で言えば、どんな国に成長するべきかの指針とその実現に向けて計画を実行する意識が、権力者層に全く無いことを指している。具体的には、やや民主主義・資本主義的な視点ではあるが、ライフラインの整備・公共交通網の拡充・治安・医療・教育といったところを政府が全くやる気がない。これら基盤が築かれるor築かれる見込みがあった上で、やっとこ国民は一人一人の生活を追及できるようになるのは先進国として同じわけで。発展途上国では尚更そうなのだがら、国家としてまともに成長できるわけがない。

それにしたって何でそんな極端な独裁体制が何時までも続いているのかは平和日本に住む我々には想像し難い。これはもう住む所違えば考え方も違うというヤツらしいが、あちらさんの指導者層の常識は富を独占して自分の部族のみに良い思いさせることが甲斐性みたいな感覚らしい。公共の利益? 知るかバカって感覚らしい。かといって国家運営のノウハウがある欧米人が口を出すとレイシスト呼ばわりされること多々らしく、いま我々が苦しいのは過去に搾取した貴様らのせいだ、と言われればそりゃまぁ何も言えなくなっても仕方がない。

それじゃあ亜細亜勢はというと、まず中国は国家包みで石油利権漁りにせっせと励んでいる。戦略資源の確保さえ出来れば後は知ったこっちゃないというシンプルなアプローチだが、採掘も中国資本なら人材機材も中国人と、地元に一切金が落ちず、地元民には一切利益なし。おまけに政府が余裕で着服とメチャクチャである。本書にはしょっちゅう「政府に入った金がどこかに消える」という表現が出てきて頭がクラクラします。

しかし、最後には僅かに希望的なことを書いてある章がある。いずれも日本人の活躍について紙幅を割いている。書かれていることは本当にシンプルなことだが、モチベーションを与え勤勉に勤めれば結果は必ず着いてくる、という原則を地道に取り組んで成功した事例を載せている。結局、日本人でもアフリカ人でも、希望が存在することが理解出来れば成長できるのだということなのだろう。

ただ、権力者層の暴力的な介入や巨大資本の焼畑農業的アプローチの前ではあまりにも心もとなく感じるのは否めない。利権にならないことやってるし反政府勢力の拠点扱いで焼いちまえとかヒャッハー行為がいともたやすく行われる地域なわけで、恐ろしい本を読んでしまったなぁという感想で胸が一杯なのでした。

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)