書名からしてかなり悲壮感あふれまくりなので内容もおおよそ予想がいくわけですが、実際に筆者の官僚に対する嘆き節というか愚痴というかボヤキがそれなりに含まれており、正直言うと読んでて気持ちのよい本ではないです。この本は中古で手に入れたんですが、下記の部分にだけ前の持ち主によってカラーペンで色づけされていたことからマジお察しである。
死ぬくらいなら辞めればいいのに……と思うのは第三者の身勝手な感覚であろう。
霞が関残酷物語―さまよえる官僚たち (中公新書ラクレ) 5. 辞めるか、死ぬか、諦めるか―官僚に残された"地獄の三択" ●霞ヶ関は自殺の"名所"? より抜粋
他人からはどう見えているかに関わらず、本当に追い詰められた人間が取る行動というのが犯罪などの外部に対する攻撃ではなく自害というあたりに、閉塞感が洒落んなってないんだな、と思います。
この本に書いてあることを一言でいえば、日本の官僚組織の疲弊ないし未熟故の結果に対する批判、てなところでしょうか。上記で抜粋したようなキャッチャーな部分を除けば、官僚の行動分析や官僚組織に対する研究の本としては中々面白い。官僚の出世の構図、政治と官僚というか官僚・議員・大臣・地方などのそれぞれのプレイヤーの力関係とそれによって生まれる負の循環、公務員が身近にいるなどしなければ外部からはかなり意味不明なキャリア・ノンキャリアの仕組みの解説などなど。
外部から見ると無駄にしか見えない政策が何故まかり通ってしまうかについても、単に利権構造というだけでなく、官僚の心理面からの裏付けもしてあったりしてこの辺は読み物としても面白い。スゲー端的に言えば「官僚が仕事とっとと終わらせて早く帰りたいからダムとか空港が出来る」 これはさすがに官僚サイドにフェアな記述ではないが、だからといって官僚が利権をむさぼっているかといえばそうではなく、そうでもしないとやってられないほど意味不明な仕事が多すぎる、というのがこの本の主張である。
すべての組織や個人があらゆる面でリスクはゼロにするべく防衛的な行動を取る結果、全体としてはスピードが全く出ず、時間をかけた分質が上がるかというと仕事のための仕事(稟議とか根回しとか)が大半で創造的な時間を誰も取ることができない。仕事をするためには仕事が増えるという悪循環で、構造的に政・官・財みんな損するという中々に生々しい大企業病の成れの果てみたいなことが延々と書かれております。
- 作者: 西村健
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/07
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