kagamihogeの日記

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販売管理システムで学ぶモデリング講座

最近、販売管理システムに関わっているので、一度大掴みに理解を深めるべく本書を手に取った。題名通り、データのモデリングから販売管理システムをデータ/業務/機能の軸で解説している。本書といま俺がリアルタイム経験中の販売管理システムとの差は、ぶっちゃけ無い。勿論、その会社独自のルールというかビジネスが盛り込まれているので、異なる点は当然ある。が、本書の内容をある種の型としてみて、現実のシステムがそのインスタンスとして見たてれば、俺にとっては本書はかなり役に立った。一般的ないし理想的なあり方はこうで、だけれども現実のあれこやこれやを盛り込んでこの会社のシステムはこうなってるのね、という理解の仕方をやる上では、良い教科書でした。

内容については興味を持った諸氏には実際に買ってもらうとして、随所に見られる筆者の販売管理システムに対する所感は実に興味深い。例えば、直送の項。これはメーカーや生産者から直接消費者に商品を届けるもので、小売的には在庫を持たないので一見オイシイ商売に見える。しかし、これでは小売の中間業者としてのアイデンティティ喪失もはらんでいる、と著者は指摘する。ネットの拡大と情報機器の低価格化とクラウドの流れでソフトの導入の敷居が下がることなどなども考えると、確かに正しい。とはいえ直接取引の流れが加速すればするほど、今後は消費者が独自に商品を選ぶ必要が出てくる。それはそれでイチ消費者としては有り難いし、まぁ商品の種類にもよるのだろうけど、概ね便利にはなるだろう。が、おそらくなんだが、その状態は結構不便でもあると思う。誰かが選んでくれたものから買うのと、イチからぜんぶ自分で選んで買うのとでは、かなりの違いがある。なので、小売という業態が消えることはなく。商品を右から左へ流すカンタンなお仕事から、お客様の購入を代理でする、なんてーかある種の目利きの役割にシフトしていくのでは、と個人的には思う。

ある概念が、最初の意味から別の意味へ移り変わっていく、というのは何も特殊な現象ではなく。例えば本書では棚卸がそう。もともと棚卸は決算作業の一環だったのが、コンピュータでリアルタイム処理が可能になった現在では、帳簿と実棚の一致作業という意味になっている、というのは本書でも語られる通り。

色々面白いところが多い本書で、もいっこ取り上げたいのは販売管理システムと会計システムの在り方。まぁフツウに組めば、販売管理システムは会計を前提としてデータもアプリも存在することになる。が、筆者はもう一歩踏み込んで、会計を前提としない販売管理システムを提唱している。確かにコレが出来れば、販売管理システムの自由度と柔軟性はかなり向上する。ただまぁ筆者が自分で言うように、そうはいっても現実と理想は違う。しかし、「さまざまな問題を、理想形からのずれを意識することでより深い理解できるようになるからだ」という意味において、学んでおく意義は充分にあると思う。

販売管理システムを学びたい人だけでなく、システムと業務の絡め方について知りたい人にオススメの一冊です。

販売管理システムで学ぶモデリング講座 (DB Magazine SELECTION)

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