親・子・孫、三世代に渡る警察官の男たちの生き様を描いた小説。見所は、各世代で日本が直面してきた社会的課題と警察官たちとが繰り広げる様々な攻防の描写。最初は戦後の荒廃と疲労しきっていながらも生活を安定させようと努力する人たちに始まり、次の世代では学生運動に対して陰から対抗する警察組織のあり方が描かれる。最後の世代は、私がようやく実感を感じられる平和な現代に舞台が移るが、その分犯罪もまた巧妙・複雑化する中での警察官たちの戦いぶりが描かれる。
上に書いたように、それぞれの世代において登場人物たちの活躍や懊悩の人間味溢れる粘っこい筆致が本書の見所だが、見所はもう一つある。それらが各世代の横串だとしたら、物語全体を縦に貫くテーマが存在している。この、横と縦の連携がとても巧みで、一つの作品としてみたときに一体感が醸し出されてくるのが面白い。
その縦のテーマとは、序盤にとある殺人事件として伏線が張られ、ストーリーの端々でチラチラとその影を見せる。中々尻尾を見せないその影なのだが、最後の最後で明かされるその正体に嫌悪を覚える人もいれば親近を抱く人もいると思う。本書は日本が直面してきた社会問題と警察官というやや特殊な職業というド派手な設定を隠れ蓑にしながら、結局のところは人間がテーマ、というところが面白い。
終盤の伏線消化シーンはとてもドロドロしているのでこのまま終わったらちと息苦しかったろうけど、ラストシーンは綺麗に締めているので読後はなんだかんだいって爽やかなものがある。なかなかに長編だけども、それだけに歯応えは十分な小説でした。
- 作者: 佐々木譲
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