kagamihogeの日記

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コーチングの技術―上司と部下の人間学

人に何かを教える、というのは本当に難しいことだと思う。俺は、このテの教育に関する本はどーにも「読んだところでどーよ」的な気分になっちゃうんだけど。それはつまり、自分を取り巻く環境にそれを適用し、効果を検証してみる、というメンドーなプロセスを踏まないことには有用性が分からないからなんだろう。

そういうわけなので、コーチングという名の理論としてその辺をうすぅーく新書サイズにまとめた本書は貴重なのだと思う。もちろん、その理論を自分がどう行使するのか、という難題は依然として立ちはだかるわけだけど。まぁ、原理・原則というのはそんなもんでしょう。

以前、俺は ステップバイステップ・プログラミング教育 というタイトルでプログラマーの初等教育方法について書いた。本書を読む限りでは、あれもコーチングの一例として捉えることができるように思う。しかし、本書を読んであのエントリには欠けているものがあるのが分かった。正確には暗黙の前提に置いてしまっている、と言うべきかな。それは、コーチングとティーチングの違いである。

その暗黙の前提とは、件のエントリで登場した新入りプログラマーたちは初等プログラミングに関する知識を講義形式で教えられており、既に充分な知識が頭の中に存在している、という状態のこと。本書にも書かれているが、コーチングは相手がある行動を実行するのに充分な知識を有していることが前提であり*1、その知識を活かして自発的に行動できるよう促す技術である。あのエントリではこの暗黙の前提を書いてないんで、そこはちょっと失敗だったな、と思う。

本書でも、知識を教え込むフェーズはティーチングとして明確に区別している。そりゃあマンツーマンで教え込むことも可能ではあるけど、一般的な知識の教え込みは多人数に対して、講義形式なり文書にまとめて配布なりで一気にやったほうが効率が良い。

なんか言われてみると当たり前っちゃあ当たり前のことではあるんだけど、そこにある当然の何かを詳らかにしていくのが「技術」というものでもあるよな、と俺は思うわけです。人と仕事をするというのはどういうことなのか……それを、コーチングという技術的視点から考察してみたい人は読んでみたらいかがでしょうか。

コーチングの技術 (講談社現代新書)

コーチングの技術 (講談社現代新書)

*1:無論、コーチはそのことを知っている必要がある