kagamihogeの日記

kagamihogeの日記です。

Embedded Technology 2008 - 11/20(木)

Embedded Technology 2008 の 2 日目。

諸事情により 1 日目のレポートはございませんです。目的は、展示会より基調講演とか特別講演で組込み界隈の情報をおおざっぱに得ること。まぁ興味本位で野次馬しにいったようなもんですな。一応俺は Java 屋さんで組込み業界の知識は浅いんで、このレポートは何時にもましてヘンテコなこと書いてる可能性高いので注意してください。

しっかし、Seasar Conference なんかと比べると会場の平均年齢が高いような……展示会の方は見に行ってないんでわかんないけど、今日 2 つのセッションは 30 代後半〜 40 代前半ぐらいが主軸な感じだったし。30 代前半の人が若く感じる勉強会って何気にはじめてな気がする。組み込み業界って何気に少子高齢化が洒落になってない、とか……?

以下、トークセッションの内容について&毎度のお断り文句。自分の所感・意見と登壇者の発言やプレゼン資料の内容ごちゃ混ぜに書くので、読みにくい点が多々あると思います。日本語崩壊してる部分も多々です。自分用の備忘録的な意味合いの強いエントリなので、そのあたりの読みにくさについてはご容赦願います。

ニコンの最新デジタルカメラを支える先端組込み技術

ニコンのカメラ開発とカメラの組込み技術の歴史・概要について簡単に触れていました。俺はカメラにそんなに興味あるわけじゃないんで、へーって思う内容がたくさんありました。ただ、俺はメカとかファームにはぜんぜん詳しくないのもあり、細かいとこはすっとばし、印象に残った箇所でレポート書いてます。

講演者曰く「せっかくの機会ですので、ニコンのカメラについて少し知って頂こう」とか。ニコンのカメラの歴史つーか半分宣伝も兼ねてるであろうムービー流すとか、うまいなぁーとか思ってしまった。創業 90 年とかすげーなー。

History of camera. カメラの原点は 10 世紀頃に発明された巨大なピンホールカメラであるカメラオブ・スキュラ。原理自体は紀元前 4 世紀にあったとかなんとか。現代のカメラの原型は、ルイ・ジャック・マンデ・ダゲール - Wikipedia なる人物が、タゲレオタイプ(銀板写真)を発明した事に端を発しているらしい。写真美術館へようこそ (講談社現代新書) に書いてあったっけなぁ、そういえば。

19 - 20世紀末にカメラはレンズ・フィルムともに急激な進化を遂げる。ポイントはロールフィルムを使用するタイプが主流となっていったこと。コレによりカメラの取り回しがすごい容易になったんだとか。で、今のカメラの原型はこの時点でほぼ固まった、とかなんとか。

ちなみに Nikon のレンズが Canon のカメラに使われてた時期もあった、ってのはその筋では割と有名なエピソードなんだとか。へぇー。

ソニーマビカ(1981)の発売。電気的に写真を保存する技術。デジタルカメラの兆し。コレはカメラ業界に激震が走ったそうだ。で、ニコンもそれに続いて、まずフロッピーに記録するカメラ出してたりとかの歴史があるそうで。

ただ、初期のデジカメはフィルムと比べるとまだまだ画質が悪く、100 万画素を超えることが課題とされていた。'97 年にニコンは 100 万画素を超えるものをなんとか出せるようになり、そんでもってこの頃からデジカメ市場が本格的に立ち上がり始めた。で、この辺から技術革新がバシバシ起こり、時代のニーズに応じて多様化・洗練化がすすんでいる。ケータイ含む←いまここ

写真の持つ社会的な影響力は計り知れないものがあったし、それはこれからもそうは大きく変わらんだろうねーみたいな。

Market マーケットの現状。あんまり興味ないので聞き流してたところ。デジカメの市場は伸び続けたけど、今日でもフィルムカメラ愛好家がゼロになったわけじゃない、ってのが面白いねーとか。今んとこ一眼レフが 1 割で残りがコンパクトカメラ。コレはフィルムカメラの時代もおんなじ構成比だったとか。各社年間 10 機種ぐらい出してるとか結構競走激しいのねーとか。ワールドワイドで見ると日本以外の北アメリカとか BRICs の比率が大きいんだねとか。ふーん。

短いライフサイクル……モデルの更新が半年- 1 年、長くても 2 年のように、フィルムカメラだと 5,10 年だったのを考えるとすごい早くなった。低価格化……すっごい勢いで安くなる。高機能化-高画素化。高画素化競争はちょっと落ち着いたけど今度は差別化・小型化・軽量化の波が。参入障壁の低さ……コンパクトカメラは電子部品のかたまりなので、部品の寄せ集めでなんとかなっちゃう部分もあったりするため、台湾・中国も脅威になるかも的な話。ただし、一眼レフはレンズがあるからちょっと難しいかもみたいな。

Digital Technology
映像素子ーセンサーの進化の歴史。CCD から CMOS へ進化したことで、高速読み出しの向上が可能になった。高速連写。

高画質 ISO 200 - IS 6400 感度の発達の歴史。感度ってのは、少ない光を捉えられるようにんする指標だとかなんとか。

ファームで画像処理とか色んなことが出来るようになった。そういった画像データ処理を更に早くするのもポイント。

差別化技術としての顔認識 AF。この辺もファームでやってる。CPU のパワー向上でむかしは PC じゃないと出来なかったことがカメラ単体で出来るようになってきた。倍率色収差補正。赤目軽減(ファームが検出して自動で塗る感じ)。手ブレ補正。レンズの位置を検出して移動させる。ダストリダクション。メカ的技術でほこりとかごみを落とす技術の紹介。

通信機能。ワイヤレストランスミッター。カメラで撮った画像をワイヤレス送信する。 Wi-Fi GPS 内臓とかも最近はあったりするとかなんとか。

System 組み込み技術
コントローラマイコンと各種 CPU やセンサが協調しあって動作する何か。RTOS の上にそれぞれのブロックが載ってる感じ。

ファーム容量の時代変遷。1999 年頃と比べるとだいたい今は 6 倍の規模になっている。出してる機種数も増えてることを考えると、ソフトウェアの容量はすごいことになっている。

ファーム開発の課題。やっぱ品質低下は大きな問題らしい。外部委託もコア技術流出とか色々問題あったり。OSS 利用の期待は高いけどまだまだ課題は多いとかなんとか。で、教育大事だよね、って話になってる。ETSS とかいう基準作りの取り組みをやってるらしい。

The future 未来
ネットとの協調。写真がデジタルになり取り回しが容易になったことで、デジタル及びネットならではの出来ることを模索していきたい、みたいな話。

組込みシステム開発への先進ソフトウェア技術導入を急げ

ソフトウェア開発における研究と現実の乖離。講演者曰く、日本でも世界でも、ソフトウェア開発そのものを改善する多くの研究が行われているが、中々それが現場の開発に生かされていない、とのこと。研究が研究の範囲に留まっており、現場は現場に関心がある状態になっているのだろう、と。また、講演者の主観ではあるものの、国内大手メーカーが以前ほどソフトウェアの研究分野に投資しなくなっているようだ、とも。

そこで、欧米はどうかというと。アメリカは軍が巨大な研究所として機能していることや、ヨーロッパはそもそも原理・原則を重視する国民性も手伝い、日本と比べると、研究成果と現場とを結びつけるのは活発なようだ。

日本は、製造業はやっぱりスゴい。だけど、アカデミックな研究成果を現場に活かそう、という動きになっかなかならないらしい。原因は、国民性とか業界構造とかまぁ色々あるんだろうね。ただ、最近は産官連携はじわじわと動きが出てきているらしい。

組込みソフトの重要性。組込みシステムは製造業を支える基幹技術であるが、開発量の増大と短納期化で職人芸的なやり方に頼るのは限界に来ている。つまり、変革期にきている。組込み開発の出自は、電機などの職人が片手間に書いていたのが原点。このため、職人芸に頼らない人材育成・開発手法に変えていく必要がある。

特に問題になっているのは信頼性技術。携帯回収や社会インフラになっている製品のリコールなどは、メーカーに対する打撃にとどまらず社会的問題にすらなってしまう。このため、職人芸的なやり方に頼らない新しい信頼性の枠組みが必要―科学的手法の導入。すごく端的な言い方をすると、プログラムの正しさ、を検証するようなやり方。ただ、形式的なんちゃらーみたいなのはアメリカ由来なとこもあるので、日本に適用するには工夫が必要だよね、と。

先進的ソフトウェア技術の例。形式検証、モデル駆動開発、プロダクトライン、フィーチャー指向・アスペクト指向、実時間システム検証、実時間オブジェクト、スケジューリング理論……などなど。まだまだこういう理論は現場に適用はされてない。けれど、真正面から取り組んで利益を出して成功してる事例もある、と講演者は強調していた。講演者としては、こういう取り組みや技術を紹介することで、国内の組込み開発が少しずつ先進的なものになっていければ、というねらいがあるようだ。

それで、講演者は国内での形式技術の利用の観点の調査を行った。

その前にまず手法のカンタンな解説。

モデル駆動開発について。まず、仕様書として、システムが満たす性質や機能について自然言語や図面で記述する。次に、システム動作の抽象的記述(実行可能)のモデルを作る。で、そっからコード生成なり何なりしてコーディングして完成、って感じ。実行可能なモデルを定義するのが肝要なようだ。コードで書いてあるからいいじゃん、とかモデルなんて頭の中にあるからいいじゃん、みたいなのを見える形かつ実行可能な形式で書くようにするのが重要なんだろうなぁ。組込みシステムでは状態遷移モデルが標準的(制御系ではブロック図などによる物理モデルの記述とか)なので、動作して検証可能なモデルが重要になるようだ。エンタープライズ系では PFD(Page,Function,Database) モデルで標準的なシステムの 80% が開発、なんてやってるとこもあるらしい。

プロダクトライン開発について。コレまでに作成したプロダクトから Common Part を作成し、そっから派生開発を行うことで色々削減する方法論。ただまぁ、共通部分の抽出とか可変点とかトレーサビリティの確保とかまぁ個々を突き詰めるのはやっぱ大変みたい。世界的にはやってるとこあるんだけど、日本ではアンマリやられてないみたい。

検証技術について。組み込み開発はビジネスアプリに比べると、実時間制約と外部環境から駆動される点が大きく違う。なので、テストエンジニアの負担が大きいのも問題。そこを形式検証でナントカ軽減できるんじゃないか、とかなんとか。

形式検証そのものの歴史は実はかなり長い、らしい。定理証明技術とかああいうのだけど俺はそーいうの全然知らからなぁ。そういう数学を根っことする定理によって、電子マネーや鉄道、ネットワーク安全性などへの先進的用例はヨーロッパなんかでは結構あるんだとか。ただ、専門家確保とか金の規模が桁違いとかででなかなか民用にまで降りてきてはいないみたい。

国内でそうした先進的技術を取り入れて成功してる事例の紹介。

フェリカネットワークスについて。VDM により Felica チップの高信頼開発を成功。モデルをキッチリ形式的に書いて、出荷後の問題をゼロにしたんだとか。次期チップ開発にも同じ手法を利用するようなので、かなり経済的なんじゃなかろうか、と言っていた。充分な時間をかけてモデル(Specitication)を書いた後に実装に取り掛かっている。もちろん Spec 自身にもバグが出る。ただ、実装フェーズにはほっとんどバグはでなかった、と。easy-to-read and executable.

リコー。OOP の手法に基づく機会制御の SPLD で成功した事例。ソースコード中心の開発からモデル中心の開発へ。職人による手作りからの脱却。ソースコード流用の限界。フィードバックでコア資産(フレームワーク、仕様書、モデル、コード、テスト仕様、教育体系など)を形成し、更にそれを製品展開に活かす。モデル自身が洗練されていくため、再利用を繰り返すほど品質が向上とかとか。

要素技術と管理技術の両輪の話について。講演者曰く、何事も上手く言ってるうちは管理技術に焦点があたり、古い要素技術に頼り切ったままになってしまう―こういう状態だと飛躍が生まれないんじゃなかろうか、と。もちろん、新しい技術が本当に使えるかどうか、ていう躊躇もある。けど、こういう状態は新技術の優位性を活かせないし、既存技術を持たない組織に負ける可能性がある。つまり、実績の無い企業や国に強みがあるんじゃないか、と指摘していた。今ならインド・昔は戦後日本―何も無かったからこそ色々出来た―はしがらみがないので新しい技術の採用がカンタンに行く。なので、既存の技術で稼ぎながら新しいこともやらないとダメかもね、的な話をしていた。

ただまぁ、このセッションでも取り上げた事例のように、産業界にも先導的成果が出始めている。今はまだ優れた一部の企業だけに留まっているけど、講演者曰く「産業界全体に導入可能なやってやれなくはない内容」だろう、と熱く語っていた。

あとは、国レベルで新しい方法論の実践事例の作成が必要だようねとか、産官学連携をもっとちゃんとやらないとねとか、教育の仕方も整備していかないとねとか、な話で締めくくり。

研究と現実の融合かぁ。MDA とかプロダクトラインなんて夢物語だと思ってたけど、ああいう手法で成果出せるってすごすぎる。