kagamihogeの日記

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チーム・バチスタの栄光

俺はこれまで一般書のベストセラーってほとんど手を出してなかったんだけど、タクサン売れる本というのはそれだけ面白いということの証左なんだなぁ、と思わせてくれた一冊。食わず嫌いは良くないね。文字ベースのエンターテイメントとしては、極上の部類に入るんじゃなかろうか。なんやかやとイベントが発生しつつ、読後に少しばかりのモヤモヤ感を残しつつハッピーエンドで締めくくる。そういった王道の展開を、高難易度の外科手術―バチスタ―をテーマに高い完成度で書き上げたところが評価高い。

物語は、とある大病院で窓際ってる主人公へ病院長が直々に「貴様にひとつ、重大な任務を託したい」と仕事を依頼するところから始まる。その病院では、連戦連勝だったバチスタ手術のチームが三連続失敗を遂げていた。エースオブエースの人員で構成されるチームでの不可解な連続死。主人公はその実態を探るため、予備調査名目・実質内偵を依頼されるのだが……事故か? 殺人か? 主人公もまた何時しかその構図の中に組み込まれていく。俺はミステリーとやらを全然読んだことが無いんだが、こういうのはいわゆるミステリーというらしい。

それにしても面白いのは登場人物たちがことごとく人間味に満ちた描写をされているところ。権力構造・人間関係構造に敏感なクセに―だからこそ、かもしれないが―自ら望んで閑職に志願した主人公・田口を筆頭に、いろんな意味で濃いキャラクターが目白押し。また、医者というのは何時いかなるときも完璧・完全な技術者ではない、と言うメッセージが込められているのではないか、と勘ぐりたくなるほど泥臭い人物像がこれでもかというほど詳細に書きたてられている。

上記の解釈は、医療崩壊という現状がある以上、まぁあながち間違ってもないと思うけど、本書は「小説は小説」として楽しんだ方が良いと思う。主人公・田口の仙人っぷりとか、白鳥のハイパー空気読まない調査術とか、純粋にたのしく読まないと損でしょう。この本読んだ人は、さぞかし田口センセと白鳥あんちくしょうコンビの続編読みたいと願うだろうこと間違いない。実際、続編出ちゃってるし。

しかし、この人間関係複雑模様+謎解き要素のあるシナリオってどうも既視感あるなぁ、と考えて脳裏をよぎったのはインフィニティシリーズ。Ever17 とか 12Riven とか。あのテのノベルゲーは世間的にはギャルゲ類としてやや肩身が狭い領域なんだけどね。俺的には、シナリオの完成度という点ではどっちも甲乙付けがたい。

そんな訳で、世の中には面白い本ってのはまだまだタクサンあるんだなぁ、と思わせてくれた一冊でした。


チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光