kagamihogeの日記

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現代アート入門の入門

すばらしいプログラマーは、別分野でも何がしかの玄人はだしな活動をしていることが多い。音楽を演奏も鑑賞もする、という人はちょくちょく見かけるし、ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち なんて題名の本も出るくらいなので、プログラミングとアートの精神性はどこか似通ったものがあるらしい。

そんなわけで。アートというものをマッタク知らないのもアレかな、と思いなんとなく本書を手にとって見た。題名には「現代アート」なんて言葉が入っているけど、俺のように「アートってそもそも何よ?」みたいな人でも充分読みすすめられる内容。最も、当然知らない人名や単語がいっぱい出てくるからその辺はちょっとツライんだけども。

この本読んでよかったと思うことの一つは、芸術を志す人たちに対して随分偏見持ってたんだな、ということに気付かされたこと。本書でも指摘しているのだけど、日本人は芸術家というと偏屈・孤独なイメージを持っているという。しかし、芸術家というのは己が感じた何かを表現することを生業としていて、そのためには世界に対してオープンにならなければ良い作品などできようはずもない、と指摘している。

俺のように考えてしまっているのは日本人特有のものらしく、日本はアートの分野では随分遅れているらしい。

十数年前、パリのジュドポーム美術館で小学校低学年の課外授業の一団と一緒になったことがある。
(中略)
その時、意外だったことは、引率の先生はほとんど説明らしいことは言わなかったことだ。むしろ逆に質問を投げかけていた。
(中略)
「顔が怖い」とか「あの人は笑っている」だとか、騒ぐのではなく、感想を言い合うことを美術館は許していた。その光景を見ていて、私はつくづく日本の美術館もこういうことが出来ればどれだけ楽しい空間になるだろう、と思ったものだ。

現代アート入門の入門 (光文社新書) 第 3 章 日本独自の「貸画廊」というシステム 日本の美術館がつまらない理由 より

上記の章は印象深かった。美術館とかそういうのがすごく身近で、芸術に触れることが生活の延長線上にあるような文化らしい。日本が経済的には豊かになれても、精神的にはなんだかイマイチ感があるのはこういうところにあるんだろうかねぇ……

でまぁ、個人レベルではどうしたもんかねぇ? って話なんだけど、著者は「まず、好きなものを好きといえるようになろう」と言っている。高名だろうと無名だろうと、自分が良いと思ったらそれでいいじゃん、直感を信じようぜ、って感じだろうか。日本人はどうにも雑誌やテレビやらで取り上げられたものに迎合する傾向があるから、まずはそこから脱却しよう、と。

面白いことに、アートってのは創るスキルと鑑賞スキルは別々に磨けるものらしい。とりあえず美術館ってものに行ってみようかなぁ、と思わせてくれる一冊でした。

現代アート入門の入門 (光文社新書)

現代アート入門の入門 (光文社新書)