kagamihogeの日記

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子どもをナメるな―賢い消費者をつくる教育

ここのところ百家争鳴の義務教育をどのような方針にするべきか? を経済学の観点からまとめたのが本書。副題通り、金を賢く使える消費者を育てよう、というのが筆者の主張になっている。人は誰でも金を使う消費者になるのだから、義務教育のうちにその基本を叩き込むことが国をより豊かにするのだと述べている。

そのためには、世界を冷静に見据え、自分の意思を明確にして金を使える人間を育てなければならない。その基点として経済学を用いるのが良いのだという。経済学の、仮定を立て、実験を行い、そこに法則を見出す。そうした科学的な活動を基盤にしよう、と主張している。

インセンティブがなければ人は動かない、というフレーズが本書には頻繁に現れる。損得勘定で動くのが人であり、それは子どもも変わらない。五教科を学ぶことは消費者として生きていくうえで重要な価値がある、ということを説かなければならない。「大人になったら誰しも勉強しておきたかったと後悔する」はインセンティブにはならない。何しろ「今」は子どもなのだから、と筆者は主張する。

「自立」もまた重要なキーワードだが、字面とは裏腹にこの概念は他者の存在を認めることが大切になる。他者の行動を尊重し、その中で自らの利益の最大化を図ることが、結果として全体の利益になる。それが本来の自立であり、経済学はそれを説明するのに最適な学問であるという。

筆者の主張がどうあれ、大量生産時代に適した画一教育から、多様な価値観を認められる教育に変化しなければならないのだろう。大人にとって、こうあってほしい子どもではなく、一個の人間として認める―子どもをナメない―教育へ。それを考える一助になる一冊だと思う。

子どもをナメるな―賢い消費者をつくる教育 (ちくま新書)

子どもをナメるな―賢い消費者をつくる教育 (ちくま新書)