kagamihogeの日記

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心はプログラムできるか 人工生命で探る人類最後の謎

人の心とは何なのか?それは本当に存在するものなのか?存在するとしたら、心は何のためにあるのか?それらの答えられそうで答えられない疑問に対し、科学の力で真っ向から勝負を挑む。それが人工生命研究の本懐だそうだ。

本書では、心を様々なモデルやプログラムを用いて創造する取り組みについて紹介している。ただ、重要なのは、プログラムによって心を計算機上に再現することにはない。そういった研究もモチロン面白い。面白いのだが、筆者曰く人工生命研究の真の勘所は、機械の上に心を創ることによって現実に存在するヒトの心を理解しようとする試みにある、という。

これら(第 8 章の内容。再帰レベルの進化に関する計算機実験のこと)は生命が知能を進化させてきた実際の過程を説明する仮説としては、多くの前提や単純化の上に成り立っているものであり、その意味では不完全なものである。しかし、計算機の中の世界で、実際に起こった進化であり、他の雑多な現象や制約を取り除いてはじめて明確に見えるようになる事実なのだ。そういう意味から、このような方法で根本的な事実を少しずつ明らかにしていくことが、ヒトの心の成り立ちにまつわるミステリーを解きあかすことにつながるのではないかと考えている。

心はプログラムできるか 人工生命で探る人類最後の謎 (サイエンス・アイ新書 31) 第 8 章 計算機の中で心を進化させる より抜粋


ヒトの心のある部分を単純化してモデルを作る。そのモデルを計算機上に構築し、動かしてみてどのような振る舞いを見せるのか観察する。この非常にシンプルな考え方で心というものを研究することができる、というのは本当に面白い。

ヒトの心は非常に複雑でダイナミックなものなので、本当の意味で心を理解するのは並大抵のことではないだろう。にもかかわらず、一見するとすごくシンプルなやり方でも色々なことが分かる、というのが人工生命研究―そして複雑系科学の―興味深いところだと思う。