kagamihogeの日記

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フューチャリスト宣言

フューチャリスト宣言 (ちくま新書)

病的なまでに未来に対して前向きな人たちの対談。

「この本は、細部をつついて批判するのがバカバカしいような明るい本となる」と予感し、そういう本にしたいと思った。

と、あとがきにあるんだが、俺にもそれ以外の感想が出てこない。色々とつき抜け過ぎていてとても清々しい気分になった。こんな感じ

ところで、この本に「大学はもう終わっている」なんて節がある。「細部をつついて〜」に同感と言っておきながらアレなんだが、昨日コンピュータサイエンス学科出身者は自信を持っていいを書いたので、その辺にはちょっと言いたいことがある。

「大学はもう終わっている」は、瞬間的には反感を覚えたけど、内容については尤もなことを言っている。ことコンピュータサイエンスは web と大学で学べることに差は無いと思うし、PC とネットワーク回線さえあれば大抵のことは出来る。なので、ワザワザ大学にまでいってコンピュータサイエンスなんてお堅いものを学ぶ必要は無い。

ただ、ソレって結構しんどいことで、おそらく俺はそういう環境ではプログラマになれなかったと思う*1

web には何でも転がってるし、じゃあどっから手をつけるか?っていうと、どこからでも始められる。これは web のすごい利点なんだけど、ホントーの初心者にはかなりキツイ環境でもある。

このキツイ環境を「web すげぇ!」と思える人にとっては大学(というか今の義務教育)なんてのはカビ臭い代物でしかない。最初から自分で自分のレールを敷く生き方してる人には体系的な教育は邪魔なだけ。

けど、どっから手をつけていいか迷う人もいるわけで。ある程度地ならしをしてもらったほうが良い人種もいる。

大学の、教育機関としての側面は決して舐めたものじゃない。コンピュータサイエンス学科ってのは 30 年とか 40 年とかいう期間ずっと「どうやったら良いプログラマを育てられるか?」ということに向き合ってきた歴史がある*2

コンピュータサイエンス学科ってのは、なんつーか、古臭いことばっかり教えてるイメージがあるし、まぁ実際その通りなんだけども、思った以上にその内容は頻繁にアップデートされている。それに、どんな順序で・どういう風に・どういうことを教えるか、という教育体系はものすごくしっかりしている。この体系自体そのものも 40 年間ずっと更新されてきたし、これからも時代に合わせて変化していくと思う*3

まぁ・・・コンピュータサイエンス学科を好成績で卒業 = 優秀なプログラマというわけでもないのだけどね・・・。フューチャリスト宣言でもケチョンケチョンに言われてるように、試験で良い点取った = 優秀、ってのが大学の基本的なスタンスなわけで。優秀かどうかなんてのは、そんな物差しで測れるものではない。web という無限大な空間をノビノビと生きてきた人間が、コンピュータサイエンス学科出の人間を上回ることがあるのは、いたってフツウの現象。

それでもなお、コンピュータサイエンス学科は 4 年間でド素人をそこそこの腕のプログラマに育て上げる貴重な場所である―少なくとも、今は。コンピュータサイエンス学科が今できることが、将来 web でぜんぶ出来るようになったとしても、その時はコンピュータサイエンス学科もそれに合わせてコンピュータサイエンス学科でしか出来ない仕組みに変化していると思う、つーかそう信じている。

*1:結果論だけどね。80 年代と今じゃ環境が違い過ぎるし・・・

*2:数年前にポコポコ出来た情報ナントカ学部とかってのはどうだか知らないが

*3:MIT が授業教材を無償公開してるのも「どうやったら良いプログラマを育てられるか?」という点に立って考えれば当然出てくるアイデアだったのだと思う。